ABC

Capacitance Meter

抵抗は、安価なテスター(回路計)で簡単に、その値を確認できます。

インダクター(L )の挙動は、 周波数とコアーの材質と流れる直流など多数の条件が複雑に影響します。その取扱いは難しく、測定は更に困難です。

コンデンサーは、抵抗のように簡単に、その値を知る手段がありません。
ケミカル・コンデンサーは表示値と実際の値が一致しない事が多い。 電気を通して使用すると、使わないで保管中にも、それぞれ異なる理由で劣化します。 セラミック型 (やや小容量の) は、容量値の表示が色で識別あれば、その値の判断が難しい。

頻繁に使うとも思えませんが、555型タイマーが話題になった時期、その学習も兼ねて、コンデンサーの値を知りたいと実験を始めました。

測定法が低速度の充放電に依存するので、高周波(MHz)で使う事が多い100pF以下のコンデンサーを測定対象から除外します。

バイポーラ型555は扱える電流が200mAまでです。 予備実験の結果、少し電流に余裕のあるトランジスターを追加して測定範囲を1,500μFまで拡張しました。


C-Meter front view

構 成
 ・クロック・パルス発生部
 ・測定対象のコンデンサーを充放電する部分
  555型タイマーICとブースト用トランジスタ(NPN,PNP)
 ・パルス幅をアナログメーターの振れ幅に変換する部分
 ・AC100Vから直流 9Vにする安定化電源

Click on picture to enlarge

この図面からコンデンサーの測定を抵抗の値を基準にするように代替したのだと分かります。
ただ一個だけ重要な役割のコンデンサー(回路図左端の70nF)があります。

クロックパルス発生の13NT1 (Programable Unijunction Transistor)は、今、入手できないでしょう。 555を自励発振モードで使って、置き換えが可能です。

計測するコンデンサーを充放電するトランジスター(Ic : 500mA級のNPNとPNP) を除いて、その他のトランジスターは小信号汎用トランジスターが使えます。
メーターは Full Scale: 1mAです。これ以上の高感度型なら自由に選べます。 直線性の悪い小型メーターは避けましょう。

注意点
回路図左端の70nFは複数個の合成です。 較正作業の結果で、この値になりました。 温度特性の良さでマイラーフィルム型を選びました。セラミック型は避けて下さい。

レンジ切換の抵抗は誤差を少くしたいですが、最初に値を決められません。 新規に買っても簡単ではありません。 あまり神経質にならず、手持ち品を(直列、並列で)組み合わせます。

7レンジすべてに、調整用半固定抵抗を入れるのは得策ではありません。 厳密な較正に、こだわるより、安定性を重視します。 不完全でも、完成品にする方が役立ちます。

ハンダ付け直後の抵抗は高温度で本来の値ではありません。 冷却した後に較正します。


C-Meter

この実装は測定端子までの配線がかなり長く、良くありません。万能基板の上で実験を始めて、そのまま実用したようです。

上の電源部と下の測定部の仕切り板は基板の支持とシールド兼用。 前面のパネルとの固定に L型に曲げた板の端を正面に取り付ける部品で共止め。 測定端子とロータリースイッチ、レンジ拡張トグル・スィッチなどで締め付けました。(ネジの頭を前面パネルに出したくありません)

厳密な較正は標準品を用意する事ですが、手持ち品をなるべく沢山測定してみると傾向が見えてきます。
コンデンサーの数値精度はその材質に依存します。 較正に使えるのはマイラーフィルムとタンタルとオイル・コンデンサーなど。これらは誤差が少なく、経年変化も少ないようです。 ケミカル・コンデンサー(電解型)は不適当です。

この回路は典型的なアナログ回路で、精密測定は困難です。
まったく発想を変えて精密級の測定器を考えると
 1.基準に水晶発振を用いる
 2.充放電時間をディジタルカウンターで計る
 3.実装法に最善を尽くす

私たちが容易に利用できる高度な基準は時間だと言われます。上掲の2項目が該当します。このシステムだと2桁くらい精度が向上するでしょう。無論簡単ではありません。どこかでアナログ信号をディジタルに変える必要があります。それは正確さを支配します。ディジタル処理は別の手段を可能にします。 複数回の計測値を平均化して結果の精度を上げるなどです。今ではこれらを容易に実現できるPICを用いるのが現代的です。ソフトウェアが支配的な時代です。
コンデンサー測定器が無くても、テスターの抵抗レンジで、コンデンサーに充電する瞬間のメーターの振れ幅に依って判定できます。(今回の測定器と同じ原理)。 数値は読み取れなくても、コンデンサー2個を比較できます。(この方法はアナログ式メーターのテスターに限られます)
測定器は較正が困難と考えますか? 絶対的な事ではなく、比較の問題であり、相対的な問題です。つまりは程度の問題です。 必要以上に正確さを追求するのは正しくありません。現実の作業に役立つことが大切です。

交流100V電源内蔵
消費電流は100mA以下ですが、瞬時のピークは500mAくらい? 電池動作も可能で、その方が都合が良いこともあります。
他方、この機器に頻繁に使うこと無く電池を入れたまま放置するとガスと液漏れの被害もあります。  電池は劣化や自己放電なども厄介です。

電圧の安定性は計測に必須の条件です。 交流電源内蔵は後々に役立ちます。
当初の実験を除けば、内蔵電源に短絡保護回路は無くても、大抵の場合は支障ありません。
一次側のヒューズは安全対策として必須です。


赤色の囲みのダイオードとコンデンサーはリップル改善用です。 
現今では安価に9Vのアダプター型電源(Switching type)を入手可能です。 
それでも図面の左半分のトランスと整流回路で構成された簡易型充電器が持っていれば、
右側半分を追加する楽しみがあります。
ここにも3端子型(Regulator)を使えば簡単です。

電源電圧は5~12Vの範囲でも作れます。その場合、較正用の抵抗とコンデンサーの値が大きく変わるでしょう。


完成品にまとめる時、ケースの条件はメーターとレンジ切換に必要な正面の面積です。
極く薄鉄製シールドケース(リサイクル品)を再塗装して使いました。
 寸法 : 140mm x100mm x75mm (メーターとツマミとゴム足は含みません)


DC 9V Regulated Power Supply

後部のトランスの横にある豆電球は 0.2A のヒューズの代用です。
外側のケースを取れば、内部構造は保守点検を容易にしています。


Right: range extend switch

6接点スィッチを越えた「7」の最高レンジは別のスィッチ(右下)で拡張。 レンジ切換の抵抗だけでは処理しきれない補正を、このスィッチの3組の接点に依って可能になりました。

測定上の注意 :
 1.高い電圧で充電されているコンデンサーは放電してから接続します。
 2.耐圧6V以下のコンデンサーは測定できません。
 3.有極型(polarized)の電解コンデンサーやタンタルコンデンサー等は、チャージ電圧の極性を一致させます。